全身運動で低体温体質が改善
![]() 幼児期は身体に秘めた可能性を引き出す時期でもある。毎日の積み重ねで未知の運動機能を増幅させる |
これらは、これまでにもたびたび触れてきていますが、今回は③のハイハイ運動と④手指の微細運動について詳しく紹介します。 ③の全身の粗大運動には3つの目的があります。第1は体幹をしっかりさせ、抗重力筋を育てます。ハイハイ運動が最も効果的です。学校では朝礼で立っていることができずに体育座りをさせるようですが、乳児期のハイハイ不足、幼児期の運動不足があるようです。抗重力筋という自分の体重を支える筋肉が育っていれば立っていられるのです。第2は、巧緻(こうち)性や柔軟性をつけることで回避能力が育ち、ケガをしにくい身体になります。これは、アヒル歩きやペンギン歩き、ブリッジ等の動きをすることで力がつきます。第3に低体温を予防することができます。
昨今の子どもたちは夜更かしや運動不足で体温が低下しています。しかし、早寝早起き、ハイハイ運動、裸足の生活をすることで改善されています。実際、3か月ほど園の生活をしていると、ほぼ全員の子どもたちの体温は36度5分以上になり、運動直後は37度前後になります。脳が一番働く体温は37度~37度2分と言われているように、運動直後の指先の時間がとても集中してできるのはこのためだと実感しています。
![]() 大人でも難しい、箸で豆をつまむ行為に挑戦する子どもたち(左上)。これらすべての運動は脳の活性化にもつながるという |
④の指先運動は、③で述べたように体温が高い状態で取り組めるので、集中力が養われる時間にもなります。ですから、スタッフは集中している子どもに余計な声かけはしないように心がけています。紐通しや型はめ粘土遊びなどは”手と目の協応”によって器用な手を育てます。また、週に1度もしくは2週に1度は給食の素材のタマネギやニンジン、トウモロコシの皮むき、インゲンの筋取りなどもお手伝いを兼ねて行います。3歳以上になると、教材を2~3種類用意して選択できるようにもしています。自分で選んだ物は、より集中して行うことができるからです。しかも、3歳以上は正座して行うようにしていますが、足腰を強くして、姿勢を正すのに効果があります。
③と④の全身粗大運動と手指の微細運動を毎日継続して行うことは、子どもたちの全身の筋肉を毎日鍛え、身体の発達の保障を可能にします。同じ3歳児でも、0歳または1歳から入所している子どもと、今年入所してきた子どもとでは、運動能力や手先の器用さにかなりの違いが出ています。加えて、最後までやり抜く、できるまで頑張るという”頑張る気持ち”が育っています。
「早寝早起き・ハイハイ運動・午前午睡…」を考案し提案したのは、元東北福祉大学教授・故河添邦俊先生です。河添先生は、群馬県前橋市にある愛泉保育園の実践に携わって実績をあげられました。一時はこの保育に共感し、全国的に広まったようですが継続するのが困難なこともあって、午後午睡に戻した園も多いと聞きます。夜型社会の現在、共働きの両親と触れ合うのは夜しかないからと夜更かしを黙認している保育園もあるようです。
確かに、保育園は両親が共働きで、昼間家庭で保育できない子どもを預かるところです。しかしながら、ただ預かるのではなく”発達を保障”しなければならないところでもあります。私たちはこの③と④の取り組みで、障がい児を多く受け入れることが可能になり、自閉症やADHDなど多動な子どもたちにも、脳性麻痺のような肢体不自由な子どもたちにも効果があることが分かってきました。それだけに、乳幼児期の子どもの生活リズムは子ども主体に考えてほしいと切に願っています。 ーエコピュア(EM環境マガジン)11回連載に投稿した中から抜粋ー